わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・哲学・思想の読書日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

小説

多和田葉子「星に仄めかされて」(3)

「群像」2019年3月号掲載。 今回の語り手はエスキモーのナヌーク。ヒッチハイクでコペンハーゲンにいるSusanooに会いにいこうとするが、ラッキー(つまり他者からの親切)が重なり、あっという間に病院に着くことができた。そこで彼は、ムンンや性格最悪の精…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(20)

「群像」2019年2月号掲載。 なんだろ、「群像」における「男はつらいよ」じゃないけど、そんな感じの存在感になりつつあるようなw 白菜の漬け物を仕込む作業中に倒れ病院に運ばれた女性の手を握る夫。その手に、漬物の塩のじゃりっとした粒が付く。女性はそ…

保坂和志「鉄の胡蝶は夢と歳月に記憶は彫るか」(7)

「群像」2019年2月号掲載。猫との記憶、音楽の記憶、ドラマの記憶といった断片を、人との記憶が貫いていく。いや、違うかもしれない。すべての記憶を、すべての記憶が貫き合っている。だから記憶は、一直線に向かっていかない。複雑の網目状に広がる、ノンリ…

絲山秋子「御社のチャラ男」(10)

「群像」2019年2月号掲載。 今回の主役は、チャラ男の部下で、うつ病で休職した二十九歳の独身女性。自分のよさは努力すること、それしか取り柄がないから努力する、そんな思い込みが、落とし穴になる。しかし、小さなことがきっかけで、這い上がれることも…

膨れ、片付き、

五時四十五分起床。午前中は銀行で事務処理。午後は書斎にこもって作業。作業がどんどん膨れあがっていくが、それなりに片付いてもいるから、まあ、いいバランスではあるのだろう。 夜は風呂でリービ英雄「西の蔵の声」を読んでいたが、例によって寝落ちして…

リービ英雄「西の蔵の声」

「群像」2019年2月号掲載。 作者自身がモデルらしい、新宿在住の六十代の白人の物書きがチベットを訪れる。この作者らしい、行間があるというよりも文中にぽっかり穴が開いているような、不思議な感覚が満ちている。リービ作品を読むと必ず感じるこの深い穴…

円城塔「わたしたちのてばなしたもの」

「群像」2019年2月号掲載。短篇特集「文学にできることをⅡ」の一篇。 おそらく設定されている時間は遠い未来。といってもSFではなく、言葉からあらゆる無駄が淘汰された時代に生きる語り手が、過去の言葉、つまり現代を生きる我々が使っている言葉で、言葉の…

空想の天気図

五時四十五分起床。青空だが風は強く冷たく、冬型の気圧配置なのだろうなあ、と、さほどない知識を使って頭のなかに下手くそで不正確な気圧配置を描いてみる。 十時三十分、小石川へ。某案件の打ち合わせ。二時間の予定が三時間になった。 サンドイッチで昼…

佐伯一麦「ななかまど、ローワンツリー」

「群像」2019年2月号の短篇小説特集「文学にできることをⅡ」に掲載。 染め物?の作家の妻の展覧会のためにイギリスの友人宅に滞在する小説家夫婦。その友人は東日本大震災の時に小説家夫婦のもとを訪れ、被災していた。外国での被災という事実が生み出すさま…

疲労と病気猫と

五時四十五分起床。昨日のランニングのせいだろう、疲労が軽くたまった感じ。十二月、アデノウイルスと気管支炎で三週間ほど走れなかった時の体力低下を、まだ引きずっているのかもしれない。ま、時間が解決してくれるはずだ。 友人Sの家の猫、チロルが亡く…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(19)

「群像」2019年1月号掲載。 市場の食堂のスタッフと店に訪れるお客たちの会話や記憶が巧みに紡がれているのだが、彼らの記憶を通じて、その世界観が少しずつ広がりはじめているような…。 群像 2019年 01 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/1…

絲山秋子「御社のチャラ男(9)」

「群像」2019年1月号掲載。今日、2月号が届いちゃったけど、まだ1月号を読み終えていない。読みたいところしか読んでないんだけどね。 万引き癖のある男、共依存な妻、そして男を上司として無意識のうちに攻撃して優位に立とうとする(と男が勝手に分析して…

年の瀬の三発

五時四十五分起床。 事務処理を済ませてから外出。そして打ち合わせを三発。少し疲れた。 読書は保坂和志「鉄の胡蝶は歳月に夢は記憶の彫るか」(6)(「群像」2018年1月号掲載)。時間と場所、記憶、感覚、身体性。 群像 2019年 01 月号 [雑誌] 出版社/メー…

気ぜわしき断絶

五時四十五分起床。寒い。デロンギのオイルヒーターでは部屋が暖まらない気がしてタイマー機能を使って五時頃からエアコンがオンになるようにしたのだが、このわずか三、四十分の間にノドが痛くなった。ノドの内側がドーナツ状に水分を奪われたような感覚。…

多和田葉子「星に仄めかされて」(1)

「群像」2019年1月号掲載。言葉と人間存在の本質に大変化球で迫った大傑作『地球にちりばめられて』の第二章という位置づけらしい。 病院の半地下でお皿の下洗いの仕事をするムンンとヴィタのところに突然やって来た(というか迷いこんできた)男の名は、Sus…

小山田浩子「夜神楽の子供」

「群像」2019年1月号掲載。短篇小説特集「文学にできることを Ⅰ」に掲載。 中間管理職になったらしい独身女性が、秋祭りの季節にふと実家のあたりでこの時期になるとあちこちに祀る「シデ」を、そして夢に見た神楽の祭りを思い出し、帰省し秋祭りの夜神楽を…

瀬戸内寂聴「命日」

「群像」2019年1月号掲載。短篇創作特集「文学にできることを」の1篇として掲載されている。短篇とはいえ、この年齢でまだ創作意欲があり、しっかりした読み応えのある小説を書かれていることがすばらしいと思う。 内容はご本人の若き日の過ちについての私小…

上田岳弘「ニムロッド」読了

「群像」2018年12月号掲載。風邪を引いたせいもあって、かなりダラダラ読んじゃったな。 社会や組織のなかで自分の存在が承認されず「異物」という自覚を抱えつづけること、信念をもってつづけていること自体が否定され徒労感に襲われること。そんなことの繰…

上田岳弘「ニムロッド」

「群像」2018年12月号掲載。主人公へ定期的に送られてくる、小説家志望だった同僚からの「駄目な飛行機コレクション」の文章、そして未発表の「塔」の小説。交際中の高給取りのキャリアウーマンは心に闇を抱え、そして主人公は彼らに軽く翻弄されながら、会…

上田岳弘「ニムロッド」

「群像」2018年12月号掲載。驚いたことに、ビットコインを題材にしている。もっとも、ビットコイン自体がテーマではなさそうなのだけれど。繰り返し登場する航空機の情報「駄目な飛行機コレクション」も面白い。 群像 2018年 12 月号 [雑誌] 出版社/メーカー…

佐々木敦「全体論と有限 —ひとつの「小説」論—」

「群像」2018年11月号掲載。 違和感について。林芙美子賞を受賞している高山羽根子という作家の「太陽の側の島」という作品について触れているのだが、この作品と、この作品より前に引用されていた「オブジェクタム」という作品、とても読みたくなってきた。…

絲山秋子「御社のチャラ男」(8) 各社のチャラ男(佐久間和子 48歳による)

「群像」2018年12月号掲載。今回の語り手の女性、同世代ドンズバなので、回想が妙に懐かしい。うん。なつかしいです。 群像 2018年 12 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/11/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 逃亡くそたわけ (…

勤労の日とCampus

勤労感謝の日。例によって、働く日。このブログを読み返せばわかるが、おそらく9割以上の確率でこの日は働いている。十一月中旬から十二月中旬にかけてはとにかく忙しくなる。休みは満足に取れない。有限会社にしているとはいえフリーランス的にやっているか…

保坂和志「鉄の胡蝶は歳月に夢の記憶を彫るか」(5)

「群像」2018年12月号掲載。章タイトルは「美は時間にも場所にも制約されない」。アイアン・バタフライが聞きたくなった。 群像 2018年 12 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/11/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る ハレルヤ 作…

舞城王太郎「裏山の凄い猿」

「群像」2018年12月号掲載。 とんちんかんなタイトルだが、読んでみると心の闇やキズに、SF的なアプローチで迫っていこうとする姿勢が読み取れる。軽い文体でモヤモヤした情感の中に切り込んでいく、ちょっと青臭いけれど真剣な感覚は舞城ならでだと思う。 …

奥泉光『雪の階』

第二章読了。ドイツの老齢の大御所音楽家カルトシュタインが喘息発作で急死。その現場に現れたという、羽子板の「藤娘」そっくりの女…。 謎が雪だるま式に膨れたところで、物語は第三章へ。さて、ここでいったん休止して、「群像」の連載小説のほうに移ろう…

佐々木敦「全体論と有限 —ひとつの「小説」論—」

「群像」2018年11月号掲載の新連載評論。読み残してた…。 今回の章タイトルは「第一章 方法序説」。まだ数ページしか読んでいないが、今のところ、スペースノットブランクという演劇ユニットの『舞台らしき舞台されど舞台』の、およそ演劇らしくない実験的な…

ちょいちょい、はみ出す

今朝も五時四十五分起床。暗いな。冬至に近づいているから日の出も遅いのだろう、と思っていたが、そうではなく、曇天、いや、小雨がぱらつく空模様だからだった。小雨の雲は厚みを感じない。だが、確実に日の光を遮る。だが、時折雨は降ったまま、雲の切れ…

奥泉光『雪の階』

あいかわら、ダラダラとゆっくり読んでいる。 主人公である惟佐子の存在感が、読み進めるにつれてどんどん変質していく。作者の意図なのだとは思うが、どんどん人間らしさがなくなっていく。ちょっと怖い。 雪の階 (単行本) 作者: 奥泉光 出版社/メーカー: …

奥泉光『雪の階』

日光に向かう車中での、新聞記者の惟佐子への取材。当時のユダヤ人批判や排斥思想の気味悪さを痛感…。 雪の階 (単行本) 作者: 奥泉光 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2018/02/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 『吾輩は猫であ…