わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・哲学・思想の読書日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

日本文学

中村太郎「慎ましく世界を破壊すること」

「群像」2017年10月号掲載。1970年代の東京が舞台。無気力な青年が出会った子連れの売春婦・夏子は彼に自殺を予告。その数日後、若い女と乳児の身元不明の死体が見つかる事件が起きる。彼はその死体が夏子かどうか確かめるために遺体が安置された警察署へ出…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」

「群像」2017年10月号掲載。餅。餅だけで1話。 群像 2017年 10 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/09/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 堀江敏幸の作品はこちら。

古井由吉「梅雨のおとずれ」

「群像」2017年10月号掲載。 冒頭だけ読んだ。めずらしく、本人の幼少期の子どもらしい無邪気でちょっぴり悲しい思い出が、いつもより柔らかな文体で語られている。こういうのも、いいと思う。ま、戦時中の記憶、ということではあるのだが。 群像 2017年 10 …

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

「彫られた文字」。所々に小島信夫っぽい文章が。 地鳴き、小鳥みたいな 作者: 保坂和志 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 保坂和志の作品はこちら。

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

「キース・リチャーズはすごい」を読みはじめる。うん、「群像」だったか「新潮」だったかに初出した時に読んだ時と印象はおなじだな。エピソードの断絶的継続、なんて矛盾したことを考えた。 地鳴き、小鳥みたいな 作者: 保坂和志 出版社/メーカー: 講談社 …

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(5)

「群像」2017年9月号掲載。 「算盤とは、補数に始まり補数に終わる」。名言的だが、ピンと来ないのは「○○から始まり○○に終わる」という表現が紋切り型だからだろうか。 食堂の料理人が高校生のためにつくってあげた、そしてその後、賄いとしてつくったおにぎ…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

表題作、読了。なぜかラスト前に組み込まれている男をダメにしてしまう女のエピソードは、内容だけでなく、その軽妙でテンポのよい文体がおもしろかった。そしてラスト、おかしな迂回エピソードが、突然、いや偶然なのか、「母の実家」というこの短篇の中核…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

表題作を、まだタラタラと読みつづけている。山梨の母の実家近辺探訪と思い出の蔵出し状態は、まだ延々とつづく。そして、時々登場する明らかな、そして意図的な文法ミス。主語や目的語が、ちょいちょいすり変わる。 地鳴き、小鳥みたいな 作者: 保坂和志 出…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

表題作。読売新聞に連載していた『朝露通信』の後日談的な内容。地の文での「あなた」という問いかけが印象的だったが、「あなた」は読者でも架空の話し相手・聞き手でもなく、実は一緒に山梨の母の実家を見に行ったことのある浮気相手の女性編集者だった、…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

最新短篇集、ということになるのかな。 「夏、訃報、純愛」。世話になった知人の学者の死が引きがねとなって、保坂和志自身らしき語り手の、回想と思考の暴走がはじまる。無宗教の友人の葬儀と、猫の葬儀。両者がよく似ているというのは、よくわかるなあ。そ…

古井由吉「たなごころ」

「群像」2017年8月号掲載の新連作。 ここ数年のテーマにしているように思える「老い」と「死」が、小説というよりは思索のつらなりという趣で展開されている。 群像 2017年 08 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/07/07 メディア: 雑誌 この…

橋本治「九十九歳になった私」(11)

「群像」2017年8月号掲載。飛ぶ意識、生きづらい社会状況、生きづらい身体。うーん、おもしろくもさみしい。 群像 2017年 08 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/07/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 知性の顚覆 日本人がバカに…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

病気からの恢復が、なれ鮨の話などと複雑に絡み合いながら淡々と語られていく。徐々に、微かに、増していく生命力。無限の力というのではない。ただ、老作家ならではの、俗な悟り、というのはおかしな表現だが、そんな感覚から生まれる、決して弱くはない、…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

最終話「その日暮らし」。作者がモデルになっている老作家の、ここ数年の入院歴が淡々と語られる。妙に冷静で客観的な視点から語られる老いの様子が、静かなエネルギーとでも言おうか、ギリギリのところで確かな力を得ているような、そんな感覚が読み取れた…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(17)

「群像」2017年7月号掲載。 暗黒大陸じゃがたら。そして浪人生の夏、秋。じゃがたらはあんましなじみないんだよなあ。ゼルダは大好きだけど。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/06/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ…

橋本治「九十九歳になった私」(10)

「群像」2017年7月号掲載。 仮死状態になっていたカナブンに憧れを抱く語り手のじいさん(≒橋本治本人)と五十歳のゆとり世代のズレまくった会話、そしてさりげなく描かれるディストピア東京。こわ。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発…

佐伯一麦「山海記」(11)

「群像」2017年7月号掲載。大昔の洪水、比較的最近の洪水、親友の自殺、自分と親友の好きな音楽、そんな内容が、微かにオーバーラップしつつ、だが基本的には平行線という感じで進んでいく。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 20…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「孤帆一片」。入院中の明け方、眠れぬ語り手の男の頭の中に、突然李白の詩が記憶から浮かび上がってきた。李白、空襲の記憶、そして入院中の夜に聞こえてくる、老人たちのうめく声。ちょっとホラーです。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「孤帆一片」。ゆらぐように移ろう季節に、ゆらぎながら老体を任せるように、それでいて妙なほど客観的に季節を観察しながら過ごす語り手の日常。 そして終戦直後の、生き残るということ、家が焼かれなかったということ、という記憶。生き残ること罪なんてな…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(3)

「群像」2017年7月号掲載。 ある登場人物が珠算塾の手伝いをするエピソードは、よくわからないがぐいぐい引き込まれてしまった。ある種のノスタルジーなのだろうが、それだけでは済まされない文章の息遣い、地味でソフトな内容ゆえの、攻撃的な文章には出せ…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

表題作読了。記憶のゆらぎ、感覚のゆらぎ、そして季節のゆらぎ。老いるとは、自身も、自身を取り巻く世界も、ゆらいでいるということをより深く認識できるようになる、ということなのかもしれない。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

表題作。老人の夢。見知らぬ女との、いわゆる「未遂」。恥じらいと、悔やみが、枯れた無意識の中に、しぶとくへばりつく…。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/02/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 古井由吉…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「年寄りの行方」。数十年会わなかった、さほど親しくもない学生時代の友人との偶然の再会。そして彼から聞かされた、やはり数十年会うことのなかった彼の父との、親類と他人の境界線をゆらゆらとふらつくような、微妙な関係。そのあやしさに、それから十七…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「年寄りの行方」。年末の慌ただしさを老齢なりにうまくやりすごす語り手の日常の姿からゆるやかにはじまり、タイトル通りの、年末にふいに家を空ける年寄りたちの話しが小さく積み重なっていく。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発売…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「時の刻み」読了。忙しいのでなかなか読み進まないのだが、そもそも古井作品は慌てて読むようなものでもない。 時の流れ方を、そして時とともに変化する自然の様子を、肉体やら五感やらを通り越して、思念で、あるいは魂で、ゆらゆらと感じている。年をとる…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「時の刻み」。カラダの外側から内側に向かって反響するよう時計の音、工場の音、電車の音といった、音の記憶たち。音が時代時代の記憶を伴う。音が、身体に、記憶を深く刻み込んでいく。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「時の刻み」。ここ数年、書き出しは季節の描写から、というのが定石なのだが、この短篇は十九世紀ドイツの詩人であるフリードリッヒ・ヘッベルの作品「秋の景色」の引用から始まる。和歌や俳句、連歌の引用は多かったが、海外作品というのはちょっと珍しい…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「人違い」。知人とともにバーを訪れた二十歳の「私」は、バーのママに言われて、終戦の年の、東京での大規模な空襲の時におにぎりをめぐんでもらった女性がママだったことに気づき記憶が甦るのだが、しかし「私」が被害にあったのは荏原、ママは芝、と場所…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「群像」最新号、読みたいところは全部読んでしまったので、少し読んで中断していたこちらに戻った。といっても、連載中に読んでたから読むの二度目なんだが。 「道に鳴きつと」の後半。母の葬儀の思い出、地縁、死への想い……に、ベランダから聞いたかもしれ…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(16)

「群像」2017年6月号掲載。例によって迷走。というか、計算づくなのだろうが。高校時代に飼っていた雑種の白い犬の壮大な旅、そして死。色におぼれた浪人生活。 群像 2017年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/06 メディア: 雑誌 この…