わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・哲学・思想の読書日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

日本文学

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(8)

「群像」2017年12月号掲載。冷凍入れ歯。市場のお祭りに巣食うオトナの事情的なアレコレ。キリンみたいな体型の男性事務員の大道芸。形見の文庫本に付着していたなぞの赤いシミ。綿菓子。小ネタばかりで地味なのだが、グングンと作品世界に引き込まれていく…

心の中でニヤニヤ

五時三十分、パンパンになった膀胱のおかげで自然に目が覚める。「パンパンになった膀胱」という表現は、金井美恵子の作品に出てくるものだ。まったく同じではないと思うが。でも、ちょっと気に入っている。トイレを我慢するたびに、心の中でニヤニヤしなが…

金井美恵子『カストロの尻』

「胡同の素馨」。ふーとんのじゃすみん、と読む。 海辺の町で血縁関係はないおばあさんの家で夏休みを過ごしていた「私」と、同じく血縁はないらしいお姉さんである菊子の二人の思い出話のなかに登場したモチーフが、ちょっと設定をアレンジした感じで登場。…

金井美恵子『カストロの尻』

「シテール島への、」。一つ前の作品の世界観はうっすらとつづいているようなのだが、語り手の「私」は大人になったようで、最後のほうまで読むと、どうやらまったく別の人物であることがわかる。人工池の島を、映画のシーンなどを思い浮かべながらぼんやり…

金井美恵子『カストロの尻』

「群像」最新号に一通り目を通したので、こちらを再開。 「呼び声、もしくはサンザシ」。ミクロで多焦点な描写で、昭和30年代だろうか、少女の田舎での夏休みの様子が淡々と描かれる。田舎という違う環境にも忍び寄る退屈さ、そしてちょっぴり背伸びしたい感…

佐伯一麦「山海記」(14)

「群像」2017年11月号掲載。この連載は史実の説明が大半になってしまうことが浩のだけれど、旧友とレコードを聴きまくった思い出だの、今回のように雪の中で十津川の吊り橋を渡る話だの、史実から離れたエピソードのほうがぐっと惹かれる。作家の冷静な視線…

石田千「母とユニクロ」

「群像」2017年11月号掲載。東北の実家に帰った「私」が、七十代で洋裁の先生をしている母と、佐々木希の下着姿のCMに触発されてイオンに入っているユニクロまで出かけるのだが、丁寧に語られる母の日常や、時折挟み込まれる「私」の東京での暮らしぶりが、…

松浦寿輝「人外」

「群像」2017年11月号掲載。 難解な描写がひたすらつづくのだが、次第にわかりやすい表現となり、それにともない、語られている主人公が、どうやら人間ではなく、人間だったころの(前世の)記憶と言葉を持ち合わせたなにかであることがわかってくる。ひとま…

松浦寿輝「人外」

「群像」2017年11月号掲載。新連載。 言葉を使い、考えることのできる謎の動物(?)の誕生から成長(?)に関するモノローグが続く。よくわからない。 群像 2017年 11 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/10/07 メディア: 雑誌 この商品を含…

金井美恵子『カストロの尻』

「破船」。語り手である「私」の少女時代の、映画にまつわる記憶。というよりも、近くの映画館のフロアで見たものと実際に見た(らしい)映画の記憶が、丁寧に、しかしなぜか混濁しているような印象のなかで(一つの文がひたすら長い金井節だからこそそうい…

猫がいなくて

五時四十五分起床。肌寒い朝。 たとえ一泊二日でも預かった保護猫たちがいなくなったことで、はやりの表現を使えば猫ロス、という状況になるのかと思ったがまったくそんなことはなく、いつも通りの朝。あの子たちのために購入し組み立てたものの、まだ片付け…

金井美恵子「カストロの尻」

最新作ということになるのかな。連作というか、短編集というか。 一作目の「「この人を見よ」あるいは、ボヴァリー夫人も私だ」を読みはじめる。これ、初出の時に文芸誌で読んでるんだよなあ。後藤明生の『この人を見よ』や、金井の80年代の傑作『文章教室』…

中村太郎「慎ましく世界を破壊すること」

読了。なくした右腕を探す男は絶望して義手を壊し、男に付き添った若者は自殺したかもしれない女とその子どもに会いに行く。厭世的な雰囲気に満ちた作品だったが、最後にかすかな希望が見える。ベタな表現だが、そんなことは関係ない。 群像 2017年 10 月号 …

中村太郎「慎ましく世界を破壊すること」

「群像」2017年10月号掲載。1970年代の東京が舞台。無気力な青年が出会った子連れの売春婦・夏子は彼に自殺を予告。その数日後、若い女と乳児の身元不明の死体が見つかる事件が起きる。彼はその死体が夏子かどうか確かめるために遺体が安置された警察署へ出…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」

「群像」2017年10月号掲載。餅。餅だけで1話。 群像 2017年 10 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/09/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 堀江敏幸の作品はこちら。

古井由吉「梅雨のおとずれ」

「群像」2017年10月号掲載。 冒頭だけ読んだ。めずらしく、本人の幼少期の子どもらしい無邪気でちょっぴり悲しい思い出が、いつもより柔らかな文体で語られている。こういうのも、いいと思う。ま、戦時中の記憶、ということではあるのだが。 群像 2017年 10 …

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

「彫られた文字」。所々に小島信夫っぽい文章が。 地鳴き、小鳥みたいな 作者: 保坂和志 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 保坂和志の作品はこちら。

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

「キース・リチャーズはすごい」を読みはじめる。うん、「群像」だったか「新潮」だったかに初出した時に読んだ時と印象はおなじだな。エピソードの断絶的継続、なんて矛盾したことを考えた。 地鳴き、小鳥みたいな 作者: 保坂和志 出版社/メーカー: 講談社 …

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(5)

「群像」2017年9月号掲載。 「算盤とは、補数に始まり補数に終わる」。名言的だが、ピンと来ないのは「○○から始まり○○に終わる」という表現が紋切り型だからだろうか。 食堂の料理人が高校生のためにつくってあげた、そしてその後、賄いとしてつくったおにぎ…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

表題作、読了。なぜかラスト前に組み込まれている男をダメにしてしまう女のエピソードは、内容だけでなく、その軽妙でテンポのよい文体がおもしろかった。そしてラスト、おかしな迂回エピソードが、突然、いや偶然なのか、「母の実家」というこの短篇の中核…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

表題作を、まだタラタラと読みつづけている。山梨の母の実家近辺探訪と思い出の蔵出し状態は、まだ延々とつづく。そして、時々登場する明らかな、そして意図的な文法ミス。主語や目的語が、ちょいちょいすり変わる。 地鳴き、小鳥みたいな 作者: 保坂和志 出…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

表題作。読売新聞に連載していた『朝露通信』の後日談的な内容。地の文での「あなた」という問いかけが印象的だったが、「あなた」は読者でも架空の話し相手・聞き手でもなく、実は一緒に山梨の母の実家を見に行ったことのある浮気相手の女性編集者だった、…

保坂和志『地鳴き、小鳥みたいな』

最新短篇集、ということになるのかな。 「夏、訃報、純愛」。世話になった知人の学者の死が引きがねとなって、保坂和志自身らしき語り手の、回想と思考の暴走がはじまる。無宗教の友人の葬儀と、猫の葬儀。両者がよく似ているというのは、よくわかるなあ。そ…

古井由吉「たなごころ」

「群像」2017年8月号掲載の新連作。 ここ数年のテーマにしているように思える「老い」と「死」が、小説というよりは思索のつらなりという趣で展開されている。 群像 2017年 08 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/07/07 メディア: 雑誌 この…

橋本治「九十九歳になった私」(11)

「群像」2017年8月号掲載。飛ぶ意識、生きづらい社会状況、生きづらい身体。うーん、おもしろくもさみしい。 群像 2017年 08 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/07/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 知性の顚覆 日本人がバカに…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

病気からの恢復が、なれ鮨の話などと複雑に絡み合いながら淡々と語られていく。徐々に、微かに、増していく生命力。無限の力というのではない。ただ、老作家ならではの、俗な悟り、というのはおかしな表現だが、そんな感覚から生まれる、決して弱くはない、…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

最終話「その日暮らし」。作者がモデルになっている老作家の、ここ数年の入院歴が淡々と語られる。妙に冷静で客観的な視点から語られる老いの様子が、静かなエネルギーとでも言おうか、ギリギリのところで確かな力を得ているような、そんな感覚が読み取れた…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(17)

「群像」2017年7月号掲載。 暗黒大陸じゃがたら。そして浪人生の夏、秋。じゃがたらはあんましなじみないんだよなあ。ゼルダは大好きだけど。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/06/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ…

橋本治「九十九歳になった私」(10)

「群像」2017年7月号掲載。 仮死状態になっていたカナブンに憧れを抱く語り手のじいさん(≒橋本治本人)と五十歳のゆとり世代のズレまくった会話、そしてさりげなく描かれるディストピア東京。こわ。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発…

佐伯一麦「山海記」(11)

「群像」2017年7月号掲載。大昔の洪水、比較的最近の洪水、親友の自殺、自分と親友の好きな音楽、そんな内容が、微かにオーバーラップしつつ、だが基本的には平行線という感じで進んでいく。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 20…