わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・哲学・思想の読書日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

日本文学

長嶋有「もう生まれたくない」

小さな盗癖、おんなったらし、イマドキの大学生活、妄想癖…。作品世界全体を覆う「誰かの死」とは関係ないエピソードが鎖のようにつながる。そこに突然、大切な人の不慮の死が挟まる。死は悲しみであると同時に、負荷であり、労務であり、事務処理であること…

長嶋有「もう生まれたくない」

接点のない有名人、微妙に接点のある知人。さまざまな死が、登場人物たちの人生をかすめていく。死は、知らぬ間に日常のなかへ組み込まれていく……。 群像 2017年 01 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/12/07 メディア: 雑誌 この商品を含む…

長嶋有「もう生まれたくない」

X JAPANの初代ベーシストの死、そしてスティーブ・ジョブズの死。さらにはMacの「サッドマック」すなわちコンピューターの死(のメタファー)。断続する死。それらに断片的に接する登場人物たち。 群像 2017年 01 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売…

長嶋有「もう生まれたくない」

直線的につながっていた登場人物たちが、急に複雑な人間関係を織りなしはじめた。その、折り目の間に、あるいは中心に、自分たちとはほとんど関係ない人物の「死」が存在している。 群像 2017年 01 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/12/07 …

長嶋有「もう生まれたくない」

「群像」2017年1月号掲載。長嶋有の小説を読むのは何年ぶりだろう。一時期「群像」で連作短篇をやっていたけれど、それ以来かな。ブルボン小林名義のコミック評論やエッセイは時折読むのだが。「たまむすび」にも年1回くらいのペースで出演しているし。 舞台…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(11)

「群像」2017年1月号掲載。 承久の乱と明恵。私小説的なスタートだったはずなのに、気づけば歴史小説になっている。 群像 2017年 01 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/12/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 磯崎憲一郎の作品は…

佐伯一麦「山海記」(7)

「群像」2017年1月号掲載。 水害の地をめぐる旅の記録が、どんどん歴史の重みをおびるようになる。このまま歴史小説に変質するのか、と思いきや、友人の死という出来事によって語り手/主人公は歴史空間から強引に現実に引きもどされる。いや、時系列を追う…

今日の事件簿

鼻きれぎれ事件 久々のソーダブレッド事件 俺シャツ買った事件 俺シャツ買った後に妻リュック買った事件 妻リュック買った後にシュトーレン買った事件 シュトーレン買った後に注連飾り買った事件 注連飾り買った後にクッキーもらった事件(ありがとう) クッ…

瀬戸内寂聴「いのち」(9)

「群像」2017年1月号掲載。 大庭みな子の突然の脳梗塞。大手術ののちに見舞いに行くと、寂聴と連れの女性編集者は、包帯ぐるぐる巻きのオバケ状態になっていた大庭から、「河野多惠子は悪人」と言われ、慌ててその場去って寂聴大爆笑。ちょっと悲しい爆笑だ…

多和田葉子「地球にちりばめられて」(2)

先週、今週とやたら慌ただしいので、ちょっとずつしか読めていない……。 (全部読んでるわけじゃないけど)今までの多和田作品以上に、「言葉」へのこだわりが強い。 群像 2017年 01 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/12/07 メディア: 雑誌 …

多和田葉子『地球にちりばめられて』

「群像」2017年1月号掲載。表紙がコケッコー。あ、オレ来年、年男だ。 若き言語学研究者を語り手にした先月号から一転、今月号は国を失った女性Hirukoの視点から物語が展開する。浮遊感と迷子感の強い文体は今回も冴えまくっている。 群像 2017年 01 月号 […

吉行淳之介「焔の中」

戦時中だというのに化粧をして悦に入って婦人会の偉そうなオバハンに目を付けられてしまった女中。その女中を放任する美容師の母、追い出そうとする息子。どうしても、朝ドラ的な視点で読んじゃうなw。田中美里ちゃんがアタマから離れなくなる。 群像 2016年…

吉行淳之介「焔の中」

「群像」2016年11月号掲載。初出は1955年。吉行淳之介を読むのは、たぶん初めてだ。大御所だから学生の頃に読んでいるかもしれないが、全然覚えていない。 眠ってしまったのであまり読めていないのだが……戦時中の日常の描写から作品ははじまる。美容室を開い…

瀬戸内寂聴「いのち」(8)

「群像」2016年12月号掲載。 河野多惠子との友情。屈折した部分と素直な部分の同居。 群像 2016年 12 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/11/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 河野多惠子の作品はこちら。

佐々木敦「新・私小説論」(9)

「群像」2016年11月号掲載。副題は「「一人称」の発見まで」。 近代に到るまで、日本の文学には人称が明確に存在しておらず、この概念が確立したのは言文一致体の二葉亭、美妙の仕事による。そして谷崎の人称に対する意識と理解の高さについて。 日本語は非…

舞城王太郎「トロフィーワイフ」

「群像」2016年12月号掲載。 姉にコンプレックスを抱く妹が、姉の奇妙な理由による離婚の危機に首を突っ込むことになる…。 軽妙で読みやすいのに書いてあることはまどろっこしい舞城節は本作も健在。 群像 2016年 12 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発…

庄野潤三「プールサイド小景」

「群像」2016年10月号の短篇小説名作特集掲載。同誌の1954年12月号に掲載されていたそうだ。 庄野潤三はたぶん初めて読む。読んだことあるかもしれないけれど、覚えていない、というレベル。まだそんなに読めていないのだが、今のところは、会社の金を使いこ…

三浦雅士「言語の政治学」(4)

「群像」2016年11月号掲載。折口と大岡信の、まさかの精神的共通点。なるほど、大岡は笑いをうまく取り入れているのに対し、折口は笑いから距離を置き重く湿った方向に向かいがちだけれど、ともに直感的かつ切り込み方の深さは共通していると言われればそん…

安岡章太郎「悪い仲間」

嫉妬、そして心の変化と裏切り。主人公の苦悩の先には、太平洋戦争開戦というパラダイムシフトが待っている。その前払い的な経験だな、こりゃ。 群像 2016年 10月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/09/09 メディア: Kindle版 この商品を…

十一月三日午後の事

文化の日。父親の誕生日だ。子どものころは父の誕生日を家族で祝った記憶は一切ないのだからおそらく本当に祝ったりしてはいないのだろう。プレゼントをあげた記憶もない。そんな親孝行な行事とは一切無縁のまま成人したが、結婚と同時に、必ず何か贈ること…

大岡昇平「ユー・アー・ヘヴィ」

「群像」2016年10月号の短篇再掲特集掲載。名作『俘虜記』の裏話、って感じかな。大岡昇平を読むのは三十年ぶりくらいかも。大学生の時に『野火』で衝撃を受けて、その流れで『俘虜記』を読んだ。その直後に大岡昇平が亡くなったんだったなあ。 群像 201…

今日の事件簿

麦次郎、調子に乗りすぎ事件(何度も何度も外に出せと言うな) コジコジのゴハンがゲロまみれ事件(ゲロはインコなどの求愛行動です) 手形事件 トイレめちゃチカ事件 突然のおいなりさん事件 画集とにらめっこ事件 突然の雨事件 どこの誰かは知りませんがお…

それなら歩いた方がいい

五時四十五分起床。肌寒い。ゴミを捨てに外へ出ると、冬のはじまりを思わせる冷たい空気がしずかに周囲を覆っている。風はない。くずれて横へたなびくうろこ雲の様子から察するに、空ではそれなりの強い風があるのだろう。黄色い朝日はさほどまぶしくない。 …

三島由紀夫「岬にての物語」

風呂で読んでいたのだが、あまりの眠気に2ページでダウン…。 幼い少年の緻密なのにあどけなさと好奇心に満ちたまなざしと、三島ならではの硬質なのに粘着質な文体のミスマッチ感が逆におもしろい。 群像 2016年 10月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社…

今日の事件簿

ZELDAのアコさんが夢に出た事件 止まり木ゲロ落とし事件 パタパタフサフサ事件 土曜日に郵便局はやってない事件 パン事件 ちゃっと起きて洗い物事件 仕事事件パート1 仕事事件パート2 超早歩きウォーキング事件 インコ恍惚事件 リケンのノンオイル中華ゴマ事…

三島由紀夫「岬にての物語」

「群像」2016年10月号掲載。 三島の文章を読むのは二十年ぶりくらいかな? あの硬質さと軟体動物的なグロテスクさの入り混じった文体が、なかなかなじめない…。 群像 2016年 10月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/09/09 メディア: Kind…

岡本学ぶ「再起動」

教団の崩壊。そして… 物語として、よくできているなあ、という感じ。現代という時代に巣食う病を、たんぱくでやや独りよがりな文体で語っている。 群像 2016年 11 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブ…

岡本学「再起動」

ビジネスのために主人公たちが立ち上げた新興宗教。その虚構から成立しているはずの教義や修行は、いつしか信者たち自身の手によって魂を込められ、現実化していく。 群像 2016年 11 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/07 メディア: 雑誌…

岡本学「再起動」

「群像」2016年11月号掲載。この作家のことは全然知らないのだが、新興宗教をテーマにした作品ということで読みはじめてみた。 比較的軽めの文体。ITをうまく取り入れている。 群像 2016年 11 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/07 メデ…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(9)

「群像」2016年11月号掲載。 話題は明恵から文覚へ。語り手の小説家も京都で合流した女優も、どこに行ってしまったのだろうw 群像 2016年 11 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 磯崎憲一郎…

瀬戸内寂聴「いのち」(7)

「群像」2016年11月号掲載。 河野多惠子とのクサレ縁的な関係、そして若い秘書との漫才的な掛け合い。いとおしさと、怒りと、悲しさと、笑いとが複雑に交差していく。 群像 2016年 11 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/07 メディア: 雑…

佐伯一麦「山月記」

「群像」2016年11月号掲載。 水害の記憶をめぐる旅から、身近にある水害の記憶へ--。 群像 2016年 11 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 佐伯一麦の作品はこちら。

織田作之助とか泉鏡花とか与謝野晶子とか

今朝も五時四十五分起床。麦次郎もコジコジもいつもどおり、キゲンも体調もよい。 曇天。涼やかな秋の風。だが日中は今なお残暑を微かに引きずっている。 午後、後楽園にて打ち合わせ。その後池袋へ移動し、打ち合わせした案件の資料さがし。まず東急ハンズ…

多和田葉子「マヤコフスキーリング」

「新潮」2016年10月号掲載。「通り」をテーマにした連作の完結編。 道の紹介なのかと思いきや、いつの間にか語り手の妄想世界なのか幻覚なのかパラレルワールドなのか、異世界に読者は引き込まれ、奇妙な説得力と不条理なできごとが複雑にからみあう作品世界…

古井由吉「その日暮らし」

連作完結。病に壊れた体をなんとか動かしながら、いつものように散歩し、仕事し、疲れや眠気とうまく付き合う。それがタイトルの「その日暮らし」。ここ数年、いくつもの連作を重ねながら作者は「老い」を書きつづけている。歳をとるという事実をを受け入れ…

古井由吉「その日暮らし」

「新潮」2016年10月号掲載。 病気、入院。体の不調との付き合い方、という視点から老齢の作家は半生を振り返る。近年の古井さんの作品の肩の力の抜け具合は、病気が原因だったのかもしれない。知らんけど。 新潮 2016年 10 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 新…

筒井康隆+佐々木敦「なぜ「最後の長篇」なのか?」

「新潮」2016年9月号掲載。「新潮」の創刊120周年記念イベント?で、この二人の対談が行われた模様。そのときの文字起こし原稿。筒井の最高傑作という声もちらほら、の『モナドの領域』の創作秘話、みたいな話。 GODのモデルがグラウチョ=マルクスというの…

円城塔「闘字」

「新潮」2016年9月号掲載。 森羅万象を指し示す漢字を、世界の仕組みとして編集した大昔の漢字辞典の話から、いよいよ闘字の実戦へ…。 新潮 2016年 09 月号 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/08/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (3件) を見る …

円城塔「闘字」

「新潮」2016年9月号掲載。 調査のために中国(?)を訪問する語り手は、市場でカゴを編む老婆に呼び止められ、持っているんだろ、あんたのは猿か、と言われ、戸惑うが…。 眠くなっちゃったので、あまり読めていません。 新潮 2016年 09 月号 出版社/メーカ…

金井美恵子「雷鳴の湾--Miscellany」

「新潮」2016年9月号掲載。 Miscellanyとは寄せ集めの意味。過去の作品やらロラン・バルトやらを引用しながら、戦後間もない頃を生きた少女の服飾やレジャーなどに関する記憶を辿る。『噂の娘』あたりに通じる感じ。例によって一つの文がひたすら長くて複雑…

舞城王太郎「Would You Please Just Stop Making Sense?」

「新潮」2016年9月号掲載。このタイトルって、やっぱりトーキング・ヘッズなのかな? そして、舞城王太郎を読むのは何年ぶりだろう。 カリフォルニア市警で殺人課の刑事をしている日系人のタナカ、通称スポンジ。彼が担当することになった壮絶な殺人事件、そ…

金井美恵子『新・目白雑録』

エアロバイク中にちまちまと読んでいる。冒頭ではDJポリスの話を、なぜ日本語では「おまわりさん」など職業に「さん」をつけるのかという問題を延々と。そして今日読んだあたりは佐村河内騒動。松本清張の『砂の器』を引合に出していた。 新・目白雑録 作者:…

瀬戸内寂聴「いのち」(6)

「群像」2016年9月号掲載。 親友(と言っていいのか)河野多恵子、そして内縁の夫との複雑な関係…。 群像 2016年 09 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/08/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (1件) を見る 死に支度 作者: 瀬戸内寂聴 …

佐伯一麦「山海記」(5)

「群像」2016年9月号掲載。 豪雪のなか、すぐ横が崖になる道を進むバスのなかで、主人公は偶然電車で乗り合わせた盲人の青年との記憶を辿る。 淡々とした(作中の、でもおそらく現実も同一の)事実の積み重ね。 群像 2016年 09 月号 [雑誌] 出版社/メーカー:…

橋本治「九十八歳になった私」(3)

「群像」2016年9月号掲載。老人力がスパークしてます。笑える。 群像 2016年 09 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/08/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (1件) を見る 橋本治の作品はこちら。

中上健次『熱風』読了

筆がのりはじめてるんじゃないかな、と感じたところで中上逝去で断筆。残念。未完作品であることがちょっと惜しい。毒味男が今後どんな悪事を働くのか。そこにオリエントの康の息子タケオがどのように関わるのか。幻覚的に、あるいは霊的に登場したオリュウ…

中上健次『熱風』

夏芙蓉の花の香り、金色の小鳥、と神話世界としての路地の象徴のように描かれていたものが再登場する。徐々に緻密でエネルギッシュな中上らしい描写もふえてきた。だが、もうすぐ終わる。というか、中断し断筆となってしまったところに近づいている。 千年の…

中上健次『熱風』

「岬」「枯木灘」「地の果て、至上の時」の主人公・秋幸の父であり「蠅の王」と呼ばれた悪徳材木商・浜村龍造をも取り込み、路地の住民たちをだますように土地の権利を奪っていった、いわば神話としての路地を崩壊させたのが、佐倉。路地がふたたび神話性を…

中上健次『熱風』

主人公が少しずつ、オリエントの康の息子であるタケオから、中本の一統の血と徳川の毒味役の血が半分ずつ流れる毒味男に移行している。書いているうちに、こちらのほうが魅力的に感じたのかも。 そして『岬』『枯木灘』などで物語の舞台となり、『千年の愉楽…

中上健次『熱風』

たかり。おどし。ゆすり。ころし。わー、こわいよー。 ここに来て、ちょっとだけだが心理描写が増えてきたような。不思議な小説だ。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2015/11/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを…