結婚も出産もしなかった女の孤独な更年期、いや更年期の孤独というべきか、それを週末田舎暮らしというライフスタイルや風土、季節などを巧みに使って印象的に描き出している。あらゆる描写が、更年期って悲しいの、という叫びの代弁的トラップとなっている。うかつに読めば、その仕掛けにはまりすぎて憂鬱になる。なんせ、すがりつける対象など、どこにもない。そんな書き方が延々とつづくのだ。あるとすれば、それは過去の記憶。しかし、そんなものばかり見ていては、先に進めない。だが、作者はあえて、先に進む必要などない、今の自分の悲しさを受け入れることもまたひとつの生き方である、と言っているような気がしてならない。いずれにせよ、死は避けられない。ならば悲しみを受容し続けることで心の準備をしてくべき。更年期とは本質的にそういうものなのではないか。なーんて読んでしまったのだが、深読みしすぎかな。
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