わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

ヴァージニア・ウルフ/鴻巣友季子訳『灯台へ』

 首が痛くてあまり読めず。でも5ページくらいは読んだかな。まあ、早く読めるタイプの作品じゃないのだが。
 画家の心境。おもしろかったので引用。長いけど(首痛いけど我慢して打つ)。

 色彩の下には形がある。ただ目を向けているときは、すべてがあんなにもはっきりと、あんなにも揺るぎなく見てとれるのに、いざ絵筆を握ってみると、形もなにもががらっと変わってしまう。とらえたイメージをカンバスに描き出そうとする一瞬に、魔物たちが襲いかかってきて、しばしば涙がこぼれそうになり、コンセプトから実作へ移るこの道のりが恐ろしくてたまらず、真っ暗な道を歩く子どものように心細くなるのだった。始終むなしい努力をしているような気持ちになる。結城をなくすまいとがんばり、「でも、わたしにはこう見える。こう見えるのよ」と自分に言い聞かせ、目に映ずる真のビジョンの悲しい余り物をしっかり胸に抱きしめているのに、魔物の大軍が寄ってたかってもぎとろうとしてくる、そんな気になるのだ。

「目に映ずる真のビジョンの悲しい余り物をしっかり胸に抱きしめている」という表現の細やかさ。描きたい対象にたっぷり感情を移入し愛情を注いでいないと、こんな素敵な言葉は出てこないんじゃないかな。

ヴァージニア・ウルフの作品はこちら。
鴻巣友季子の作品はこちら。
池澤夏樹=個人編集 世界文学全集はこちら。