肉球が竹チップと竹チップの間に挟まって不快なのか、それとも体毛が引っ掛かってしまうからなのか、理由は何となく想像できるのだが、花子は夏の必需品となりつつある竹シーツを嫌がる。竹シーツとは小さな竹のチップをヒモで繋げてシーツ上にしたもので、その上に寝るとひんやりとする。これがぼくは大好きなのだが、花子が嫌うから、竹シーツの上に敷きパッドを敷き、その上に寝ていた。多少冷たさは感じるものの、ダイレクトに寝た場合にはかなり劣る。まあ、仕方ないかな、と割り切って使っていたのだが、昨夜の暑さにとうとう降参してしまい、夜中に敷きパッドを外してしまった。花子め、一気に機嫌が悪くなった。五時ごろから、ケージの屋根の上に昇り、眠るぼくを鋭い目つきで見下ろしながら、フナン、フナアアアアアン、フウン、と鳴きつづけていた。五時五十分、根を上げて起床。
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早朝より仕事。花子がやたらと甘えるが、まあ仕方ない。午前中に買い出しに出たのと、夕方に散歩に出た以外は書斎に引き籠もり、延々とコピーを書きつづけた。
二十時、夕食。二十二時、風呂。風呂上がり、氷水を飲んでいたら中学生のころに読んだエッセイをふと思い出した。当時、小学館から「FMレコパル」というFM放送の番組表を掲載した隔週(だったかな)の雑誌が発売されていて、デュランデュランやカルチャークラブを聴いていた洋楽好きの同級生や、ユーミンあたりのニューミュージックを聴いていた同級生はみなこの雑誌を買っていた。ぼくはというと、すでにJapanの「孤独な影」や「ブリキの太鼓」「オイル・オン・キャンバス」に傾倒し、実はほとんど当時の流行の音楽を聴かなくなっていたのだが、それでも二十歳近く歳の離れた従兄から譲り受けたオンボロのステレオを有効活用するために、ぼくも「FMレコパル」は、少ない小遣いをやりくりしながらではあったが、毎号必ず買っていた。FMならタダで高音質な楽曲を聴けるので、番組表は大変魅力的だったが、ミュージシャンが連載するエッセイもぼくは楽しみにしていた。そのうちの一人に、確かゴダイゴのタケカワユキヒデがいたはずだ。彼が、こんなことを書いていた記憶がある。喫茶店のお冷や、つまり氷水が大好きなのだそうだ。好きだから、飲み方にこだわりがある。夏の暑い日、ふらりと喫茶店に転がり込む。そこで冷たい飲み物を注文するのだが、それを飲む前に、お冷やを飲む。水だけでなく、氷が入っているものがよい。しかし、出されてすぐに飲んではいけない。ウェイトレスがお冷やを持ってきたら、それを目の前に置き、じっと待つ。浮いた氷が中の水を冷やす。水が冷えればグラス自体も冷える。そうなれば、グラスの表面は結露して、どんどん水滴がたまっていく。この水滴こそが、水もグラスもキンキンに冷えたことの証。グラスが大量の汗をかいたようになったところで、一気に身体に流し込む。水分といっしょに、冷気が体全体に染みわたるのを、その刹那楽しむ……。こんなことを書かれていたと思うのだが、今となっては確認のしようがないなあ。
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