わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

保坂和志「未明の闘争」(9)

 映画学校に通う中国人ホステスの、アタマがクラクラしそうな日本語での映画『雨月物語』論、あるいは霊魂論。たとえばこんな感じ。

「人間は死んだら無限にになりますと思う人がいます。死んだらゼロになりますと思う人がいます。二つの思いがありますだけど二つは同じなのですは私の思いです。なぜですか? みんな生きているあいだの人をよく見ませんだけど、思うときは見たときを思います。見るから思います。見るのは体です。耳もそうです。『雨月物語』のラストで田中(引用者注:田中絹代のこと)が声だけしゃべりますだけど、なぜ田中とわかりますか? 同じは声ですからわかります。死んだ田中が無限になりますかゼロになりますかならば田中の声は透明の声になりますのはずです。登用の思い方は無限とゼロは同じですが私の思いですだけど、映画の学校のみんなは『おかしいよ』『違うよ』と言いますだけど、みんなの思い方は数学の思い方です」

 かなり哲学的(スピリチュアルではない)な内容を、日本語が下手な中国人が話しているように書くのはかなり難しいことだと思う。それにしても……保坂さんは本作でいったい何がしたいんだ? というか、何をしているんだ?
 最後に。先日、保坂和志さんの御尊父様が逝去されたそうです。ご冥福をお祈りします。

群像 2010年 07月号 [雑誌]

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群像 2010年 08月号 [雑誌]

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