草間には、サブカル系の若者たちでやたらともてはやされているような感があるアート界のカリスマ、という勝手なイメージを抱いている。実際、かなり若い(ふだんは美術館なんて絶対に入らないような)人たちも来ていたようだ。それは素晴らしいこと。どんどんアートに目を向けて、好きになってほしい。
若者はさておき。
草間、以前に何かの企画展でいくつかの作品を観ているが、個展として観るのははじめての機会。平面作品ばかりで、草間の名を現代に轟かせた立体作品は一切展示されていない(ただしミュージアムショップで水玉カボチャのオブジェとか買えるけどね)。草間と言えば水玉だらけの世界、という印象だが、その通りの、執拗なまでに水玉を書き込んだ作品が多く並ぶ。カボチャとブドウのシルクスクリーンはおもしろかった。ほか、写真を利用したコラージュ、テクスタイルっぽい感じの抽象画など。
狭い、と思った。美術館のなかが、ではない。作品空間が、である。水玉や編み目は、たしかにキャンバスを超えてどこまでも広がっていくように思える。だが、世界全体がそれのみで構成されていたら、「広さ」という概念は失われてしまう。なぜなら、その世界は外部から何も受け入れることができないからだ。ありきたりの表現を使えば、世界が閉じている。そしてその内側は、この個展のタイトルどおり「ワタシというナニモノか」という要素で満ちている。
草間は自身の作品を「反復と増殖」なんて表現で語っているようだが、反復し増殖しているのが「ワタシというナニモノか」なのであるとすれば、それは反復でも増殖でもなく、「反復と増殖」に擬態した「個」でしかない。「個」なら、誰でも描けるだろう。だが、草間が抱えている「個=ワタシというナニモノか」は、誰にも描けない。おそらく草間自身にも描けないのではないか。描けないから、擬態が生まれる。自分がナニモノかわからないから、擬態が生まれる。そしてその問いには答えがない。しかし草間は考えつづける。だから個は水玉や編み目となって無限増殖のまねごとをはじめるのだ。疑似増殖世界で描かれるカボチャや帽子や靴は、「個=ワタシというナニモノか」を構成する一要素(おそらくは草間が大好きな存在)であるからこそ、時折具象的に描かれるのだと思う。
と草間論をぶちかましてみたけれど、どーなんでしょうか。11月7日まで。
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/
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