五時四十五分、自然に目が覚める。カーテンを閉め切った部屋は時間を失う。何時なのか、時計が示す数字を見ても一瞬理解ができず混乱したが、朝だということに気付くまでには数秒程度しかかかっていないはずだ。どうやら目覚ましのセットをしわすれたようだ。ほんの一手間で、人は容易に混乱する。弱い生き物だ。いや、弱いのはぼくのアタマだけなのかもしれぬが。
今日も浴室のリフォームがつづいている。工具が立てる激しい音、職人たちのせわしない足音、そして話し声。こんな状況でも仕事ができる自分の順応力に驚いたが、いや、これは単にナニかを無視する力に優れているだけであって、真の意味での順応ではない、とも思った。順応できていないのは花子も一緒で、いや花子はぼく以上で、三十分おきくらいに、ドアを開けろ、工事作業の様子を見せろ、とうるさい。猫とは変化を嫌う動物だ。工事がはじまる前の環境に戻せ、といっているのかもしれない。
十七時三十分、ようやく工事終了。床タイルはハガれ、浴槽は傷だらけ、壁はカビだらけのボロボロだった浴室が、爽やかなリフレッシュスペースに生まれ変わった。最新の給湯器の自動給湯システムに驚いた。「浴槽にお湯が入りました」など、日本語で教えてくれるのだ。
風呂、快適すぎて一時間以上浸かってしまった。