「群像」11月号掲載。気づけば、身体を重ねあったばかりの関係である女が、余命いくばくかとなった主人公の母を、主人公以上に献身的に、慣れた手際で世話をする。彼女が献身的になればなるほど、主人公との心の距離は離れていく……。
複雑かつ玄妙な男女の機微。最近の古井由吉のテーマのようだが、不条理じみた、初期の作品にあるような狂気の片鱗すら感じさせる展開と描写は、一度読むと、さほど視覚的に書かれているわけではないというのに、その映像がなかなか頭から離れなくなる。傑作だと思った。
古井由吉自撰作品 6 仮往生伝試文 (古井由吉自撰作品【全8巻】)
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/04/07
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (6件) を見る