「筒井康隆と自意識の遊戯」。自由奔放で現実と非現実を簡単に、そしてぐっちゃぐちゃに行き来する70年代・80年代の筒井の作風は今読んでも本当におもしろいのだけれど、情報の深い穴や思考の無限ループに陥りそうになってもどこか薄っぺらい印象があることを以前から不思議に思っていた。そこで、この評論。そうか、作品に「私」が現れないからか。主人公が筒井康隆になっている場合でも、それはあくまで虚像であって、筒井本人が投影されているわけではない。自分自身の虚像でとことん遊んでやろうという感覚、それが私小説的な重苦しさのない、ぐちゃぐちゃなのにさっぱりした作品になっている原因。なるほど。
- 作者: 三浦雅士
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/10/09
- メディア: 文庫
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