わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『雨の裾』

 表題作。重い病に倒れた母を毎日見舞う大学生の息子。息子と交際している女は、頼まれてもいないのに彼の母を見舞い、毎日病室につめて身の回りの世話をするようになる。息子とその彼女の、母を介してはいるものの、そして肌を重ねる描写などまったくされていないものの、なぜか妙に、匂い立つくらい肉感的な関係、ただこれだけで、静かにではあるが、妙に力強く、読者を作品世界へ引き込んでいく。その肉感的な関係を、梅雨時の気まぐれな雨が、巧みに盛り上げていく。
 
雨の裾

雨の裾

 

  

古井由吉の作品かこちら。