「群像」2016年1月号掲載の、金井美恵子の特別寄稿文。
金井さんが気まぐれでふと読みはじめた藤枝静男著作集第一巻目に収録されている「志賀直哉・天皇・中野重治」に登場している園池公到(そのいけきんゆき)が、銀座線で偶然出会った将校の四、五歳くらいの娘がおしっこしたくなったというので自宅まで将校とその妻、そして娘を自宅まで案内して書生用のトイレを貸してあげたら、その将校は森鴎外だった、というエピソードがエッセイとして綴られていたというのだが、それじゃその娘って森茉莉じゃん、園池も、この話を紹介した藤枝も、気づかなかったの? という話。なんだか、かわいいですね。