わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

片岡義男『恋愛は小説か』読了

「割り勘で夏至の日」。京都からの下りの新幹線で二十年ぶりに偶然再会した、大学時代のジャズのビッグ・バンドのボーカルで今はピアノやドラムもこなすミュージシャンの女性と、テナー・サックス奏者で今もプロとして活動している男性。再会からはじまるかもしれない、大人の恋の予感が最大限に高まったところで、あれれ、という間に作品世界は幕を閉じる。連作短篇集だがほぼすべての作品に登場する男女が別人だというのに微妙に設定を重ね合わせているから、長いことこの二人のことを見つづけて(読みつづけて)いるような気になってしまい、異様な親近感が宙ぶらりんにされた感覚に戸惑ってしまった。いやあ、これもまた一種の感動。それも、新しい形の感動だと思う。

 

恋愛は小説か

恋愛は小説か

 
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