わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・哲学・思想の読書日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

多和田葉子「コルヴィッツ通り」

「新潮」2016年4月号掲載。「○○通り」連作シリーズ8作目。

 冬のコルヴィッツ通りで待ち合わせ先へと急ぐ女性小説家は、途中で戦前の子どもの幽霊や、貧しい人々を無償で診察したという伝説の医師コルヴィッツや出征したその息子、嘆き悲しむ母たちがいる幻想の世界へと迷いこむ。というよりは、自ら幻想の世界を現実の上に二重になるようにつくりあげ、そこで幻の、でも実在していたはずの悲しみと戯れる。その戯れ方に、生きるということに対する厳しい視線がわずかに感じられる。だがそれを、作者は人をケムに巻くようなあやしい文体で巧妙に隠そうとする。あるいは、あけっぴろげに書くことで逆の意味を持たせようとする。うん、多和田調、って感じです。

 

新潮 2016年 04 月号 [雑誌]

新潮 2016年 04 月号 [雑誌]

 

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