わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

舞城王太郎「Would You Please Just Stop Making Sense?」

「新潮」2016年9月号掲載。このタイトルって、やっぱりトーキング・ヘッズなのかな? そして、舞城王太郎を読むのは何年ぶりだろう。

 カリフォルニア市警で殺人課の刑事をしている日系人のタナカ、通称スポンジ。彼が担当することになった壮絶な殺人事件、そして彼と同居する女性の霊感娘の奇妙な予言。そこには何の因果もない。だがそこに、人は意味を、連環を、無理やりにでも求めようとする。その意味に翻弄され、自滅する。そんな、めちゃくちゃな、偶然なのか運命なのかよくわからん状況で極限まで追いつめられたスポンジの悲惨な姿がハードボイルド調に描かれている。舞城と言えば軽快、というか軽薄な、でもズシリと重いことを言う不思議な文体、という先入観があったのだが、本作では軽薄さを抑え、アメリカの探偵小説のような語り口になっている。そして、バイオレンス、バイオレンス、バイオレンス。グロな描写が苦手な方は読まないほうがいいかもしれない。でもぼくは、それを我慢してでも読んだほうがいいと思う。ラストに描かれている、言葉に翻弄される人間の、言葉を超えようとする瞬間のエネルギー暴発寸前の様子は、なぜだかよくわからないが、惹かれてしまう。

 

 

新潮 2016年 09 月号

新潮 2016年 09 月号

 

 

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