二時四十五分、歯が抜けた夢で目が覚めた。そして五時、葵の遊ぶ物音で目が覚めてしまう。そのまままどろんでいたら五時四十五分、いつもの起床時間になった。 新聞を取りに行くと、ごく微かな霧雨が降っていた。路面はまんべんなく鉛色に濡れている。空も鉛…
「群像」2019年2月号掲載。猫との記憶、音楽の記憶、ドラマの記憶といった断片を、人との記憶が貫いていく。いや、違うかもしれない。すべての記憶を、すべての記憶が貫き合っている。だから記憶は、一直線に向かっていかない。複雑の網目状に広がる、ノンリ…
引用をストックしました
引用するにはまずログインしてください
引用をストックできませんでした。再度お試しください
限定公開記事のため引用できません。