わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

診断

  五時、暑さか花子の鳴き声か、いずれかで目覚める。ゴハン後、花子と書斎で寝る。花子は書斎とアトリエと行ったり来たり、落ち着かない。わがままでぼくを困らせたいだけか。若い女が男をじらす、あの技に似ていると思った。
 
 八時、起床。身支度していたら花子がスルリと衝立を抜けてリビングへ走り込もうとした。花子が行ったよ、と、麦次郎といきなり対面させて興奮することがないようカミサンに忠告の意味でと少々大きな声を出したら、声質だか声量だかが怖かったようで、威嚇された。腰が低い。ジリジリと後ずさりしている。アウー、とニンゲンを攻撃する前によく発する恐れと敵意が入り交じった声でこちらをにらみつけてくる。やっちまったか、また激怒か、と思いつつも冷静に様子を見ていたら、ほんの数秒で平常心に戻った。
 ここ数日のづけで生まれた大量の可燃ゴミを廃棄。その後、散歩がてら事務所へ。事着くやいなや、道具入れに入っているスクレイパー――壁面や床面にこびりついた汚れをこそげ落とすためのヘラ――を持ってとんぼ返りで戻った。
 書斎の窓のふき掃除を軽く済ませてから、花子を連れて「グラース動物病院」http://www.grace-ah.com/へ。花子の精神状態もかなり落ち着いたので、健康診断をしてもらうことに。血液検査とレントゲンだ。問題がなければ、来週以降に歯石が原因で歯槽膿漏になってしまった歯の抜歯を行う予定だ。診察中、十五分ほど待合室で待ったが、ドア越しに花子が麦やぼくら夫婦に威嚇していたときとおなじ鳴き声が聞えてきた。終わりましたよ、と先生。あれこれいろいろな事態を想像しながら花子を覗き込むが、ぼくに対してはいたって普通。やられた、やられた、と訴えるような目ではあるが、そこに「アンタのせいで」といった恨みの色はない。
 つれて帰る途中で、トンボを見かけた。
 帰宅後は緊張が解けた反動か、口を暑い日の犬のように大きく開け、ハアハア言いながら部屋のあちこちをうろついていた。だが呼べばすぐに寄ってくる。スリスリと身体を刷り寄せて来る。
 
 午後からはベランダの掃除。十四時三十分、カミサンとふたりだけでふたたび病院へ。検査結果を聞きに行く。特に問題なかったので、来週末抜歯の手術をすることにする。事務所の機材を自宅に移す前に、やれることはすべてやって起きたい。
 
 動物病院のあとは、「カルディ コーヒーファーム」へ。スパイスを購入。クミン、カルダモン。つづいてルミネへ。一階にできた小さなパン屋というか、ケーキ屋というか、店名もよくわからんがそんな商品を扱う小さなお店で軽くお茶してからお買い物。「ナチュラルハウス」でセロリ、ヨーグルトなど。西友へ移動。食品売場でラム肉のリブ、キャベツ、レタス、細長いトマトなど購入。ルミネに戻り、「ザ・ガーデン」でナン。タウンセブンへ。「アンテンドゥ」でフランスパン。また西友へ。「DAIK」で珪藻土塗りに使うコテをふたつ。「無印良品」でぼくのトランクス。最後にもう一度ルミネに寄り、たい焼き屋で紫芋のたい焼きと、黒豆のたい焼きを一匹ずつ。帰宅。
 リサイクルや環境保全をテーマにしたらしい公共施設「あんさんぶる荻窪」の前を通る。ここは建物のまわりが網状の鉄板で被われている。奇抜なデザインだと思っていたら、どうやら地上からアイビーなどのつる草を育て、そこを這わせて植物と建築を共存させようと考えているらしい。藤森照信の「タンポポハウス」や赤瀬川原平の「ニラハウス」に通じる発想だ。このアイビーの育ち具合を確かめるのが愉しくて仕方ない。夏本番直前、梅雨の恵みを受けてどれくらい育ったのかが気になったが、建物を覆い尽くすにはまだ数年かかりそうだ。
 途中、お寺のそばで蝉の声を聞いた。梅雨が明けたらしい、と報じられていたのを思い出した。
 
 帰宅後はアトリエの壁の壁紙はがし。スクレイパー大活躍。
 夕方からカレーをつくる。ラムのリブ肉とトマトで羊カレー。仕上げにヨーグルトを使った。煮詰めすぎたか、塩辛すぎてずいぶん味を調整することになったが、結果としてはインド料理店でもなかなか出会えぬ傑作に仕上がった。クミン、コリアンダーを惜しまずブチ込むのがポイントか。
 
 はじめてアニメの「ブラックジャック」を観る。手塚作品に深い思い入れはないが、「ブラックジャック」は比較的好きで、単行本を集めたこともある――誰かに貸したきり、戻ってきてないが――。アニメに原作のテイストを求めすぎるのは罪だと思っているが、原作が偉大だとつい比較してしまう。やはりアニメは原作に敵わない。手塚や石ノ森の作品に多い、最後の一コマのあとにつづく妙な余韻。あれを動画で再現するのは至難の業なのだろうか。
 つづいて「名探偵コナン」まで観てしまった。これもはじめてだが、なんだよオモシロイじゃん。単純に愉しめた。来週も観ようかな、なんて考えている。
 
 源一郎『ミヤザワケンジ』より、「オッベルと象」読了。「革トランク」読了。うーん、青臭い。大作家の大作とはとてもおもえないほど、テーマが青臭い。作者はおそらく賢治の作品世界をパロディ化することで、寓話を現代に蘇らせ、そこから現代に欠けている「歴史」に意識を向けようとする。だがその過程が青臭い。いや、青臭いのは賢治の特長か。もう少し読めば、作者の意図ももっと明確になるだろう。