わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

初日

 移転初日。通う場所が変われば生活のリズムも大きく変わるのは今までの経験でよくわかっていた。通う場所がなくなる、すなわち自宅が職場になることも、フリーになって一年目にしっかり経験しているが、そのとき身に付いたリズムはすっかり錆びついていたらしい。朝起きたらまず何をするのか、その判断すらまごついてしまう。だがそばに猫がいることは大きな救いだ。集中しすぎて限界を通り越し、そのまま取り掛かった仕事に飽きたり苛ついたりが以前は当たり前だったが、猫がそばにいるだけでそこから抜け出すことができた。花子の予想外の動きが、集中をやさしくかき乱す。そのやさしさが、いやな方向で限界を超えてしまうことを抑制してくれるようなのだ。イライラするまえに猫に気が向く。ほんの数分だが、かまってやる。仕事に戻る。イライラが消える。

 六時起床。自宅を職場にしたら必ずやってみよう、とかねてから願っていた、早朝の散歩というものをやってみた。家のすぐそばだが、なじみのない道というものは何本かある。そこを、早朝に歩いてみたかった。今日は午前中からスケジュールが立て込んでいたので十五分程しか歩けなかったが、それでも十分新鮮だった。まだ蝉の鳴き出さぬ時間。夏の朝とは、静寂の時間であることが身にしみてわかる。石垣のある大きな屋敷の庭で、アフガンハウンドらしき長毛の大型犬が泥むき出しの庭に寝ころんで、朝の風にしみじみとそよがれていた。時折目を細める顔つきが、温泉につかったニンゲンの「あふう」と声を漏らす直前の表情にそっくりなのだ。こんな出会いを増やしたい。
 
 七時三十分から仕事に取り掛かる。溜まりに溜まったメールをさばいているだけで一時間が過ぎてしまった。
 十時、水道橋のE社で打ち合わせ。終了後、そのまま有楽町へ。交通会館にある北海道プラザみたいなところで夕張メロンアイスを食べて一息ついてからT社へ。Nさんと新規案件の打ち合わせ。小雨がぱらついたが、あっという間にやんでしまった。
 
 午後からは自宅兼事務所で黙々とコピーを書き、ときおり書斎とアトリエをうろうろしつづける花子と遊び、リビングでグースカ寝ている麦次郎の様子を見に行った。能率は別に事務所を構えていたときよりもよいような気がする。
 二十時三十分、一旦終了。モロヘイヤ餃子で夕食。
 
 入浴後、今は日記を書いている。このあと「内村プロデュース」を観るつもりだが、そのあとは仕事すべきか寝るべきか、ちょっと迷っている。
 
 野坂『東京小説』。ぐうたらかーちゃんの描写、すごすぎる。読み手のリズムをまるで無視した文体。
 阿部和重グランド・フィナーレ」。これって社会派小説なのかなあ。