六時三十分起床。昨夜よりは眠れたという実感がある。
仕事前に軽く散歩。善福寺川の遊歩道沿いを十五分だけ歩く。ここ数日で気温は四度、五度と下がったか。朝は陽射しよりもひやりとした空気で目が覚めることが多くなった。七時三十分、陽はすでに東京のマンションだらけのいびつで狭い空でも見つけられるくらいの高さに昇っているが、空気はまだ冷たく澄んだままのようだ。ゆるやかに流れるコンクリート川の水の音に、エコな悲しみを漠と感じつつも、それが心地よさにかき消される。そんな感覚にとらわれながら歩いていると、カルガモよりひとまわり小さなカモが藻だか虫だかをついばんでいるのを見つけた。コガモだ。数十メートル先にはオナガガモも集団もいる。渡り鳥が来ると冬の到来を予感できる。冬鳥たちは一年中この川で呑気に過ごすカルガモたちに混じって、毛繕いやら食事やら、生きるためのことに余念がない。
おい冬鳥め。もう来やがったか。今年はちょっと気が早くないか。おまえたちが来ると、せっかくの栖が狭くなっちまってかなわない。
そういうなよ、冷たいな。一年ぶりの再会に涙を流すくらいの気持ちはないのか。おれたちは悲しいぞ、呑気な留鳥さんよ。
呑気な、とはなんだ。今年は三十五年ぶりにこの川が氾濫したんだ。幼かったモノは、流されたりもした。ニンゲンたちもたいへんそうだったぞ。ショウドクっていうのか、しばらくはアレの臭いがくさくてくさくて、たまらなかったよ。
川の冬枯れ、ってのはおかしな表現だが、水の少ない善福寺川しかおれたちは知らない。だからおまえたちの苦労は想像できないよ。まあ、たいへんだったな。ごくろうさんよ。
……と、こんな会話でも交わしているのだろうか。
某大学広報誌、某ハウスメーカーウェブサイト、某企業CI企画。昼飯を食いすぎたら午後はまったく考えることができなくなってしまった。脳というヤツは、満ち足りすぎると働かなくなる。消化に懸命な胃袋に血液を奪われたからか、それとも思考とはもともと空腹を満たすために天から与えられた能力なのか。能率が悪くなったので脳を使うのは断念し、事務処理をすることにした。
夕方、吉祥寺へ。「リブロブックス」で、大江健三郎『さようなら、私の本よ!』、色川武大『狂人日記』、リービ英雄『星条旗の聞こえない部屋』、それから仕事用の資料を一冊購入。十六時三十分、カイロプラクティック。治療後、カミサンと合流。カミサン、井の頭公園でゴイサギやオシドリを見ていたようだ。「無印良品」でワークパンツを購入。カミサンもカットソーを買った。
西荻窪「力車」で夕食。ハラミ、ホルモン、塩カルビなど。
さて、今日は日記を先に書いた。これから大江の新作、ひょっとすると最後の小説を、読もうかな。
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