「16 ドゥイノ・エレギー訳文1」「17 ドゥイノ・エレギー訳文2」。リルケの「ドゥイノの悲歌」を、著者が散文訳している。難解。ぼくなんぞには日本語だって満足に理解できない…。それでも第二歌に気に入った部分があったので引用。
愛する者たちは、それだけの聡さがあるならば、夜気の渡る中で不思議の言葉を交わしもするだろう。というのも、すべての物はわれわれにわれわれの実装を隠している様子にも見える。見るがよい。樹木たちは存在する。われわれの住まう家々もなお存続する。われわれひとりがすべての物を掠めて、風に吹き抜けられて、内外絶えず交替するように、通り過ぎていく。そしてすべての物は意を一にして、そんなわれわれを見ながら口をつぐむ。なかばはおそらく恥として、またなかばは、言葉に表わせぬ希望と見て。