わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『辻』

「半日の花」読了。三十年前の、旧友の自宅での、ささやかな花見。そこで自分は気が振れた、見えなくなった、と打ち明けられる。狂気は突然、辻での出合い頭のようにやってくる。その後、旧友の狂気はなりを潜めるようだが、彼らの関係も賀状を交わすだけになる。そして、旧友の死。死という現実から会わなかった期間を期間を省み、自分は二度ほど、(非現実の中ではあるが)旧友と会ったことを思い出す。主人公は旧友の夢の中の声を思い出す。最後を引用。

 ここは、誰にも見えないが、辻なのだ、と言った。四方から道が集まってここで消える、出て行くと見えるのは、見せかけに過ぎない、人もここに差しかかっては失せる、それでも繰り返し差しかかる、先へ先へ惹かれて熱心にやってくる、もう済んでいるのも知らずに、と言った。