わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

大西巨人『縮図・インコ道理教』読了

 この作品は、オウムをモデルとした大量虐殺宗教集団「インコ道理教」の教義や歴史の「縮図」ではない、と作者が巻末に書いていた。インコ道理教という組織は、大量虐殺を行った神国であるという意味において、第二次世界大戦中の皇国日本と共通点があり、だからインコ道理教の組織や歴史は日本の「縮図」である、だから国家がインコ道理教に対し覚える感情は「近親憎悪」なのだ、ということであるが、うーん、作者がそう思って書いているというのは、作品を半分くらい読んだところで見えてきちゃうんだよなあ。だから、「近親憎悪」の意味について模索しつづける登場人物たちの姿は少々無理があるように思えてしまう。もっとも、彼らがその過程で考えたことや持ち出してきた引用はとても価値あるものだったのだが。