2006-05-26 古井由吉『聖耳』 読書日記 「晴れた眼」読了。「白い糸杉」。物語、というほどの筋はない。主人公は、目を患いながらも日々を過ごし続ける。病室で、そして手術と手術の合間の、退院しているときの旅先で。眼には異常がある。入院中はガーゼに覆われ視界は奪われる。だから主人公は、耳を澄ます。澄ました耳に届く音が、記憶を呼び覚まし、連鎖させる。音から何かを積極的に読み取ろう、というのではない。ただ、聞こえる。それがたまたま、真理をかすめる。