近代絵画の名作がズラリと揃った大原美術館所蔵の作品を展示する企画展。ゴーギャンが観れるというので興奮していたが、期待しすぎたのか、さほど感銘は受けなかった。ゴーギャンはタヒチに楽園を見たというが、それを頭の中でこねくりまわしちゃったのかなあ、なんてちょっと思った。展示されている「かぐわしき大地」は観念的すぎる。展示会自体が、全体的に刺激が足りない感じ。
- クロード・モネ「睡蓮」
西洋美術館にある「睡蓮」よりも幽玄的。観ていると、そのまま池の中に引き込まれ、自分もあのかすんだ光の一部になってしまいそうな気分になる。
- 村上華岳「松山雲煙」
水墨画の世界なのに現代的な写実性、リアリズムがあった。
光の分解と再構築をしているな、と思った。
- 横山操「塔」
建築物の構造そのものが持つ、引力に逆らい天に向かってそびえ立とうとするエネルギー、強固さ、そんなものを感じた。
- ジョルジュ・ルオー「道化師(横顔)」
道化の役から解放された道化師、といったところか。道化を演じることの苦しみを知った人間の素顔だ、と思った。ルオーの絵には、悲しみや苦しみをプラスのエネルギーに転換する力があると思う。好きな画家のひとり。
- マックス・エルンスト「つかの間の静寂」
戦争がテーマの作品? まるで空襲を受けている夜の街のような。
- ジャン・フォートリエ「人質」
デフォルメされ抽象化されかけた横顔。そこからは、虚無的な悲しみが見えてくる。色使いは決して虚無的じゃないんだけどなあ。
やはりこの絵は藤田にあって藤田にあらず。
- 靉光「目のある風景」
「美の巨人たち」で見たっけ。変な絵。「ヤバイものを見ちゃったなあ」と思ったが、中央に描かれた目玉を見ていると、ホントにやばいのは自分自身、絵のほうがぼくを見て「ヤバイものを見ちゃったなあ」と思っているような気がしてしまう。
- ピエール=オーギュスト・ルノワール「泉による女」
ルオーとは対象的なタッチなのだけれど、ルノワールも好きなんですよなぜか。すごい透明感! 女とは、光だ。
- 萬鉄五郎「裸体美人」
本来、性とは自由であっけらかんとしたものなのではないか。そんなことを感じさせるおおらかさがある。牧歌的エロティシズム、とでもいおうか。
常設展も見た。かなり入れ替わっている。すごかったのは須田国太郎の「法観寺塔婆」。異常なテンションの黒。騒がしい黒。