わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

安彦良和『古事記巻之一 ナムジ --大国主』読了/『古事記巻之二 神武』

 安彦版・新解釈古事記日本書紀。ただ単に、安易に神話の神を物語に登場させているのではなく、大和朝廷が登場するまでの古代日本の歴史上の空白を古事記日本書紀といった神話から埋めることはできないか、そこには神格化された歴史上の「人物/ニンゲン」たちのドラマが符丁となって隠れているのではないか、という考えに基づき、神話の新解釈イコール物語、という構成になっている。その考え方自体、おそらくは日本の考古学や歴史学の膠着した状況(なのかな?)に一石を投じる貴重なものとなっているのだが、本作はそんな難しいことはヌキに、ヒロイックファンタジーとしても十分楽しめる。運命と宿命の狭間で揺さぶられる登場人物のニンゲン臭さ、生きることの希望と悲しさ、血の連鎖、そして「征服」のもつ歴史的役割と罪。
 安彦良和は、「歴史」という視点をもってストーリーテリングできる、文学界も含めて数少ない貴重な語り部。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』もすばらしいのだが、古代日本に材を取った物語を、もっともっと描いていただきたい。

ナムジ―大国主 (4) (中公文庫―コミック版)

ナムジ―大国主 (4) (中公文庫―コミック版)