2006-11-24 古井由吉『山躁賦』 読書日記 「花見る人に」読了。山腹なのか山頂なのか、高い場所にある「花の寺」と呼ばれる場所を訪れる主人公。桜は冬枯れし、枝だけが四方八方に広がる様を眺めるうちに、彼はいつしか中世の歌詠みのころか、古き時代の花盛りのころを夢想しはじめる、いや、幻覚を見ているのかもしれない。幻想と現実の境目を、狂うか狂わぬかの危ういバランスで綱渡りしているような感覚。それがふと、生と死の境目を思い起こさせる。