まったくもって不思議な作品。中上の『千年の愉楽』と対比させると面白く読み解けるかもしれない。
●古典回帰、などと言いながらも、実は古典を踏みつけにしてその向こう側にある古典を切るという、アムロ・レイのジェットストリームアタック破りのようなことをしている
●情景描写から次第に、あるいは突如切り替わるようにして突入する架空の対話あるいは描写は、狂気なのか、自身の妄想なのか、幻想なのか、霊的世界とのコンタクトなのか。……三つ目とはとても思えない。
●なぜ寺を巡るのだろう。主人公には信心など微塵も感じられない。
●時おり登場する古典の相手、具体的に会話できるのは「いかめ房」こと阿闍梨祐慶だけ。
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/09
- メディア: 文庫
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