わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『山躁賦』読了

 まったくもって不思議な作品。中上の『千年の愉楽』と対比させると面白く読み解けるかもしれない。
●古典回帰、などと言いながらも、実は古典を踏みつけにしてその向こう側にある古典を切るという、アムロ・レイジェットストリームアタック破りのようなことをしている
●情景描写から次第に、あるいは突如切り替わるようにして突入する架空の対話あるいは描写は、狂気なのか、自身の妄想なのか、幻想なのか、霊的世界とのコンタクトなのか。……三つ目とはとても思えない。
●なぜ寺を巡るのだろう。主人公には信心など微塵も感じられない。
●時おり登場する古典の相手、具体的に会話できるのは「いかめ房」こと阿闍梨祐慶だけ。

山躁賦 (講談社文芸文庫)

山躁賦 (講談社文芸文庫)