六時五十分起床。激しい雨。篠つく雨。アスファルトを打つ音が、静かな朝に、静かに響く。おかしな表現だが、これがいちばんしっくりくる。
布団を畳もうとしても、花子がなかなかどいてくれない。ぼくの枕にアゴと両腕をのせ、目を細めてじっとしている。雨音を聴いているのか、眠たいだけなのか。どいてよ、花子。
十時、外出。雨足はかなり弱まり、午前の喧騒に音も紛れる。十一時、小石川にて打ち合わせ。昼過ぎにはまた雨足が強まりはじめた。刹那、晴れ間が広がった。しかし雨足は弱まらない。いわゆる天気雨、キツネの嫁入り。妖気漂う空。
午後は某インテリアメーカーのパンフ、某家電メーカーの企画など。雨は夕方にはあがったが、書斎にこもっていたためか、夕焼け空はおがめなかった。
十九時過ぎ、三十分ほど散歩に出る。西荻の住宅街のあちこちに芳香を漂わせたジャスミンが終わりかけている。甘い香りに、青臭さと土のにおいが混じる。花は半分以上が枯れている。土のにおいは、花びらの腐敗したにおいだと気づく。植物は、土から生まれ土へと還る。