建築探偵・藤森照信の建築作品と路上観察学会の研究成果があわせて公開されている。素材の持ち味と手仕事のアナログさをとことん追求した仕上げ手法を細かに紹介していたり、実際の作品を丁寧に解説していたりと、エルメスのギャラリーで物足りなさを感じていたぼくにとってはかなり贅沢な内容だった。縄でできたテント内で観る路上観察の映像は、観ているとまったりした気分になる。珍妙な癒しの空間である。
発想の原点は遊び心に満ちているが、それが実際の建築物になると、他者の追随を許さぬほど凛とした緊張感がただよいはじめる。それでいて、あたたかで、包容力がある。それが藤森建築最大の魅力だとぼくは思う。