わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『槿』

 萱島の口から語られる、疑惑の夜の記憶。それがはっきりすればするほど、杉尾と萱島の関係がどんどん曖昧に、しかしどこか、おかしな部分だけが妙に強くなっていく。
 記憶を語る萱島の描写、女らしいしぐさというものを強く感じさせる一方で、妙な空虚さにも満ちている。