ドウブツ、しかもネズミを主人公にした冒険譚らしいのだが、だからといって児童文学的というわけでもないような。冒頭の数ページに描かれた夏の終わりの河原の様子、そこから遊び呆けていた二匹のネズミへと焦点が移動していく部分の文章のスゴさといったら。リラックスして対象を見つめ、見えた個々のものの本質を押さえつつ、固くて重たいコトバに頼ることなしに、軽くて、しかし的確で、そして楽しさすら感じさせる文体。
松浦作品、短編以外を読むのははじめてだが、今までこの作家をマークしていなかったことを少し後悔している。
- 作者: 松浦寿輝
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
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