わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

茅野裕城子『ミッドナイト・クライシス』

 『犬身』を書評していた茅野の作品。イマドキの中年女性の生き方を通じて、何を伝えようとしているのかがちょっと気になる。
 それよりも、「群像」で書評を担当した井坂洋子が引用した、清水哲男(この作家、よく知らないんだよなあ)の詩がなかなか面白かったので引用。

 水の中でもつれた糸は
 水のなかでほぐれてしまわなければと
 森閑とした夜の便所で便器を
 見つめていた私は何歳だったろう
 便所を出てしまえば便所のことは
 忘れることができたのである。
 いまはただその白くて
 すこやかな糸の果てたところで
 ラクダのように乾き上がった女と
 同衾したいのである。
 (清水哲男知命抄」――私のための演歌)

ミッドナイト・クライシス

ミッドナイト・クライシス