『犬身』を書評していた茅野の作品。イマドキの中年女性の生き方を通じて、何を伝えようとしているのかがちょっと気になる。
それよりも、「群像」で書評を担当した井坂洋子が引用した、清水哲男(この作家、よく知らないんだよなあ)の詩がなかなか面白かったので引用。
水の中でもつれた糸は
水のなかでほぐれてしまわなければと
森閑とした夜の便所で便器を
見つめていた私は何歳だったろう
便所を出てしまえば便所のことは
忘れることができたのである。
いまはただその白くて
すこやかな糸の果てたところで
ラクダのように乾き上がった女と
同衾したいのである。
(清水哲男「知命抄」――私のための演歌)
- 作者: 茅野裕城子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
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