わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『古井由吉自選短篇集 木犀の日』

「陽気な夜まわり」。眠りの考察を枕に、大学時代の友人の幽霊体験(ドッペルゲンガー体験といったほうが正確か?)へ。80年代の作品だが、すでに文体は現在の古井に限りなく近く、おまけに内容も、あの世とこの世の境界線をうろつくような、ここ数年の古井作品の特徴と通じるところがあるようで驚いた。
「夜はいま」。これも80年代の作品なのだが、なんと「リストラ」を扱っている。もっとも、リストラなどという言葉はまだない時代だが。会社勤めに潜む狂気。その狂気を感じること自体が、実は正常な精神であることの証明なのではないか、という逆説。なのかな。

木犀の日 (講談社文芸文庫)

木犀の日 (講談社文芸文庫)