わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

鈴木志郎康『見えない隣人』

 これまた気になっていた作品。やすーく買えました。傑作『やわらかい闇の夢』の後になるのかな。「ゴゴシマヤ」で何ページか立ち読みした。短めで平易な言葉で少々ナンセンスな世界を語っているようなのだけれど、実は意外にずっしり重い。こういうの、好きなんだよなあ。気に入った作品を一つだけ引用。

   二本足
 
「私は犬だ」と思ったときに
地面を這って歩いていられたらよかったのだ
硬い地面に
私の手は弱すぎて
私は犬だというのに
日本の足だけで歩いてしまった
「クン、クン、においがしますね」
おしなべてにおいのしない人間はなく
気が狂いそうだ
一つのにおいにきめて
そのにおいの人が御主人様だ
「御主人様、あなたのにおいだけをかいでいるために
一生どこまでも従順について行きます」
そうきめてしまえば
四本足でも
二本足でも
同じだ