鬱病を患っていた主人公は、ノルウェーでの聴覚体験を通じて、自分が少しずつ変わりつつあるのを実感する。物語の軸の一つになっていたノルウェー人作家の小説「The Bird」の読解が、この聴覚の変化の部分に深くかかわっていく。別の作品の引用を通じて心理描写したり物語を展開させたりするのが得意な日本人作家は多いけれど(大江健三郎とか、高橋源一郎とか。後藤明生もだなあ)、今日読んだ部分ほど鮮やかなのにはめったにお目にかかれない。
- 作者: 佐伯一麦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/06/29
- メディア: 単行本
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