「新潮」八月号より。老いによる感覚の狂いに、生き方の、あるいは存在自体の狂いが重なる。狂気とは騒々しさを含むものだが、本作での狂気は常に浮ついていながらも寡黙である。狂気が、静寂に向かって耳を澄ませている。そこに徒労感はない。あるとすれば、ともすると永遠につながりかねぬ時間感覚の狂い。狂いに狂いが重なり、また狂う。
歳を取るとは、自身の内なる狂気を認め、うまいぐあいに折り合いをつけていくことなのだろうか。ならばその狂気を、狂気と呼ぶべきではないだろう。

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