中国を舞台にしたリービさん一連の短篇の、ごく初期の作品集ってことになるのかな。リービさんの作品、好きとは言い難いのだが、読まずにいられぬ魅力がある。それを好きと素直に認めればいいのだが、そうしたくないと思うのはなぜだろう。好き嫌いはさておき、リービ英雄の作品には、主体と対象、両方を異化するという妙な化学変化が感じられる。こんな書き方ができるのは、アメリカ人でありながら日本で小説を書き万葉集を研究するリービ英雄だけだろう。
表題作。96年初出とある。十二年前の中国は、まだ現在ほど近代化が進んでいないようだ。時代の色がとても濃く出ている。
中国大陸を、受け入れながらも拒絶するという矛盾を抱えた存在として捉えているのかな。大陸を追われ台湾に自国を築いた中国国民党と、外交団だった父の赴任先だったのか、幼いころ台湾に住んでいたらしい主人公の「彼」の家族の姿が重なり合う。
- 作者: リービ英雄,Hideo Levy
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