「初だより」。年賀状のことではなく、他界した旧友・奈倉が残していた、出されなかった主人公あての手紙のこと。年明けに、未亡人から渡される。
奈倉の存在を、主人公は忘れることができない。深い付き合いでもないというのに。悲しみにとらわれているわけではない。むしろ死に対する態度は淡々としていて、死んだという事実の重さよりも、死んだ者が生前残した様々な観念思想言語の類の断片について、いつまでも飽くことなく主人公は考えつづける。一種の憑かれた状態なのだろう。あるいは弔いと言ってもいい。

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