わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

多和田葉子『球形時間』読了

 刺々しいのになぜか全体的に軟体動物のよう。自己主張が激しそうなのに、なぜか社会状況に埋没する。反抗心でいっぱいなのに、気づけば他の何者かに共感している。突っ走りたいのに、停滞している。そんな、不安定な少年少女たちを描いた傑作。タイトルの「球形」は、丸くてとらえどころのないもの、そして日の丸を意味しているのだろう。「キュウケイ」という音は「休憩」にもつながっている。
 多和田葉子にしてはめずらしく、ラストにストレートな社会批判が展開されている。こういうの、嫌いじゃない。

球形時間

球形時間

ヒナギクのお茶の場合

ヒナギクのお茶の場合

犬婿入り (講談社文庫)

犬婿入り (講談社文庫)

ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫)

ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫)