うーん、長いわ難解だわで、かなりて手こずった。
一般的な書評では、東北を舞台に、歴史と家族を描いた意欲作、なんて言われているようだが……。描かれている舞台は、歴史の表舞台としての中央=江戸あるいは東京、ではなく、それを支えたり、あるいは反目したりしながら独自の発展を遂げた東北という「影」である。そして描かれているのは、教科書的な歴史ではなく、そこに埋もれている、あるいは教科書的歴史とはまったく異なる次元で進んだ「影」の歴史であり、その「影」の歴史を自ら生み出したり、あるいは歴史に、いや「影」に翻弄されながら遺伝子のバトンタッチを繰り返してきた「影」のような家族である。この「影」を描くために、作者は特殊な文体と特殊な登場人物設定が必要だった、のだろうなあ。ひとつめの影の家族であった狗塚家は長男の失踪(?)と次男の死刑執行で絶えるが、ふたつめの影の家族である冠木家に狗塚の長女が嫁ぐことで、名字=かばねは消えてしまうが、血だけは残る。ふたつの影が、ひとつになる。
そして、本当に描きたかったのは、その「影」の中に存在する「光」だったのではないか。その光とは何か。それは、呪われたような血に翻弄されつつも、一瞬一瞬を、自身の血を信じながら生きる生き方であり、その果てにある死=再生、そして新たな生の誕生である。
影。本作においては、狂気と置き換えて考えてもいいかもしれない。もちろん、光にも狂気の芽は内包されているのだけれど。

- 作者: 古川日出男
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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