わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

Laughter & Forgetting

 六時に起きて、空は晴れていて、草彅剛が全裸になって公然わいせつで捕まったことをネットニュースで知って、それはちょっとおかしいと思って、闇に包まれた人気のない公園で裸になるのは悪いことではなく、むしろそんなことをする時間や空間が必要だと思って、というか、裸になるくらいシャレだよシャレってな、何でもLaughter & Forgettingでいいじゃんか、と思って、悪いのは深夜に叫んだことだけだよ、唯一他人に迷惑をかけたことだ、でもそんなことで逮捕されるのは不条理極まりない、そもそも逮捕ってなんだ、罪ってなんだ、と考えはいくらでも広がり、でもやはり空は晴れていて、遠くには雲が重なっていて、それが少しずつこちらに近づいて、空は霞んで、でもしばらくすればまた晴れて、晴れて、晴れ渡って、晴れ空のもと、ぼくは外出し、汗ばむ背中をちょっとだけ不快に感じながら荻窪駅に向かい、中央線に乗り、新宿で山手線に乗り換えて原宿駅で降り、修学旅行生でごったがえしている竹下通りを、ホンモノの雷のかたちのように不規則にジグザグジグザグと歩き、歩き、人混みを抜け、明治通りで左に折れ、セコムのビルの前を通り抜け原宿警察署の前に行くとそこには、赤坂警察署からこちらに搬送されたという草彅剛を追ってきた報道陣でごったがえしていて、竹下通りといい警察署といい原宿はあちこちがごったがえしていて、でもやはり空は晴れていて、その晴れ空のもとにそびえる某ビルの上のほうで、ごったがえす街を横目でこっそり見下ろしながら打ち合わせをして、終了後はもう一度ごったがえす人混みの中を二度ほど、つまり警察署の前と竹下通りと、ホンモノの雷のかたちのように不規則にジグザグジグザグと歩き、抜け、原宿駅で電車に乗り、新宿で乗り換え、池袋で乗り換えて茗荷谷に向かい、こちらの街は人は多いもののごったがえしてはおらず、そして空はまだなお晴れ渡っていて、ぼくは歩いて次の打ち合わせ場所に向かい、打ち合わせをして、空の色が琥珀色に染まりはじめる前にそこを出て、家へと向かい、そのころには晴れ渡っていた空は夕陽に赤く輝き、家に帰ると、やりかけた仕事や届いたメールでデスクはごったがえしていて、アタマの中もごったがえしていて、でもどこかが、何かが、晴れ渡っているような気がしていて、晴れているなら、昼でも夕方で夜でも関係ない、広がる空のもとで、自分自身を広げてみたい、そう思うのは当然なのだ、いや、逆かもしれない、ごったがえしているからこそ、広げたいのだ、心だけじゃ足りない、身体も広げる、そうしなければ、すべてが閉じる、閉じれば道は歩けない、まっすぐだって、ジグザグにだって歩けない、そんなことを考えながら、草彅剛のことをしきりに報じる夕方のニュースを、横目ではなく、普通の視線で、普通に、見る。
 伊藤比呂美ねーさん、お悔やみ申し上げます。そうですね、お母様はやっととげが抜けたのですね。

とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起

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