オードリーを助けたい。ただそれだけの想いに駆られて、ふたたびユニコーンガンダムに乗り込み「赤い彗星」の再来、フル・フロンタルに挑む主人公バナージ。
オードリーことミネバ・ザビを人質に、ネオ・ジオンに撤退を交渉するものの決裂してしまうシーン、地球連邦というあまりに大きすぎる組織の、いや、大人社会の? くされっぷりがものすごくよく描写されている。気になったので、ちょっと引用。
(前略)与えられた責任に応じて定められた役割、選択肢--ちょっと位相をずらせば別の選択肢もあるはずなのに、そのちょっとが踏み出せない。いまの自分がそうであるように、責任という言葉の重さに目も口も塞がれてしまっている。
だから大人は本音を話せないのだ、とバナージは不意に思いついた。律儀であればあるほど、おのれの職責に没入し、全体を見渡す視点を失ってゆく。そしてどうにも立ち行かなくなった時には、誰かに責任を押しかぶせて沈黙を通す。そんな資格はなかった、権限はなかったという言い方で責任の所在を曖昧にし、目先の保身に終始する。それで世界という全体が滅んだら、その時にはきっとこう言うのだ。自分には、世界を救うだけの資格と権限がなかった、と。
機動戦士ガンダムUC〈3〉赤い彗星 (角川コミックス・エース)
- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/12
- メディア: コミック
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