わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

津島佑子『電気馬』

 先週に購入したのだが、ずっと紹介しそこねていた。最新短篇集。津島さん版の遠野物語というか、現代版柳田国男というか。今のところ、そんな感じ。
「指」。これはあまり妖怪っぽくない。他界した男の子の記憶が薄れてゆくさま、悲しみが消えてゆくさまを、指遊びと粘土(に付いた指紋)というふたつを使ってピシッと表現している。完成度の異様に高い掌編小説。
「雪少女」。現代の東京によみがえる雪女、なのだが、雪から生まれた雪女は東京では育つことができないのか、ここでは雪少女になっている。彼女の登場に、ある老人の悲しい過去の記憶が重なる。しかし、その重なりが雪少女の存在を消してしまうかもしれず……。
「かもんかか」。甲府あたりにつたわる若い男が好きな山姥らしい。が、山に来る若者なんぞ現代にいないから、かもんかかは街まで降りて、コンビニだので男に声をかけ……。
 今のところ、現代に生きる妖怪の悲哀、って感じ。これって、平成アニメ版「ゲゲゲの鬼太郎」でよく扱っていたテーマに似ているかも。そこに現代人の抱える悲哀も重なってくるところがゆにーくなのだが。

電気馬

電気馬

あまりに野蛮な  上

あまりに野蛮な 上

あまりに野蛮な  下

あまりに野蛮な 下