わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

色川武大『生家へ』

「黒い布」。歪んだ親子関係が描かれている。フツー、親子をテーマにした場合は親の視点から暴走する子を描き「理解できん」と嘆くことが多いと思うが、本作の場合は親の視点から、ぐれていたはずなのにまっとうに生きはじめた息子の様子をて否定したいと渇望する父親の歪んだ感情と思考が描かれている。そんなものの上に成り立つ親子関係だから、とにかく虚しい。どんなふうにストーリーが展開しても、虚しさばかりが募る。息子の愛情を父親は吸収することがない。ただただ、あらゆる感情が空回りしている。

生家へ (講談社文芸文庫)

生家へ (講談社文芸文庫)

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