「黒い布」読了。病を通じて頑固さがやや曖昧な方向に向かいはじめた父は、自分のアイデンティティを取り戻すためだろうか、若いころに尽くした家族の幻影もとい幻覚の中に身を落とす。そこにいたのは、愛する故に憎しみを募らせてしまう息子のブタのような(と彼には見える)姿と瓜二つの、若いころの自分の姿だった……。
そしてラスト。二人で銭湯に入った親子。衰えた父の下半身の姿を通じて、はじめて二人は心を通わせはじめるように思えるが……。
『怪しい来客簿』『狂人日記』もすさまじいが、本作も負けず劣らずの名作。ぼくはとても気に入りました。小説のあるべき姿が提示されているようにすら思えた。
- 作者: 色川武大,平岡篤頼
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/05/10
- メディア: 文庫
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