ちょっと前に新聞雑誌の文芸欄に「現代の姥捨」なーんてタイトルで話題になっていた作品。もちろん単行本が発売されているが、ぼくは手元に残っていた初出誌である「新潮」1月号に掲載されたものを読んでいる。細部が単行本と異なっているかもしれない。
まず、「登場人物」と称していきなり老婆の名前と年齢の箇条書きリストから書き出される、という手法に驚かされた。ババアがいっぱい出てくる小説ですよ、と高らかに宣言しているわけだ。
七十の誕生日を迎え、斎藤カユは山に捨てられてしまう(現代の話ですよ、これ)。カユは捨てられても極楽浄土に行けると信じ、死をまったく恐れていない。ところがカユは捨てられた雪山で凍死寸前になっていたところを、姥捨の先輩犠牲者である桂川マクラらに助けられてしまう。極楽に行けなかった、村の掟を破った、と怒り狂うカユ。慣習とは、ニンゲンの本能、すなわち生きたいという欲求すらねじ曲げてしまう可能性をもっている、ということか。
- 作者: 佐藤友哉
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/06
- メディア: 単行本
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