日本人がある意味「一度死んだ」と言っても過言ではない戦後の、まだまだ引き上げできない人がたくさん残る上海という地で、故意に殺された者と誰の意思とも関わりなく病で死に向かう者、そして「殺し」と死にゆく者の「看取り」の両方を依頼された男。極限を一度超えてしまい、何もかもがゼロ地点に向かおうとする状況の中での「死」のあり方と、「死」との対峙の仕方、その困難さを描いた武田泰淳初期の力作。文章はきわめて平易なのだけれど、ズキューンを真理を突き抜けてゆく感覚はさすが泰淳先生。
戦後文学が直面していた問題って、現代日本にもまんま当てはまるような気がする。違いは戦争で破壊されたか、経済で破壊されたかだけ。破壊の対象はモノだけではない。
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