戦中戦後、武田泰淳という作家は何を体験し、何を感じたのか。『ひかりごけ』をはじめとする作品群から、山城さんはひたすらにそれを読み解こうとする。国文学者や旧来型の評論家によくある、作家の年表を辿りながら、表面的な史実と作品の相関関係を読み解くということではなく、時代を動かした原動機としての集団心理、共同幻想のようなものが無意識のうちに感じ取られ、作品に反映される、そのシステムを史実と精神面の両方から捉えようとする試み、と読める。
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