話題の書き下ろし作品。大江さん自身が「晩年の仕事(レイト・ワーク)」と言っている5部作の完結編(になるのだろうか)。5冊を通じての主人公・長江古義人の父の死についての物語。古義人は大江さん自身がモデルで、当然ながら死んだ父もまた大江さんの父親がモデルのようだが、父のほうはかなりの部分が大江さんが幼いころから思い描いていた妄想によるところが大きいらしい。
今日はひとまず序章と第一章の冒頭だけを読んだ。父の死を描こうとした未完の作品「水死小説」を仕上げるために、古義人は妹アサが管理していた父の死に関する資料が収納されている「赤皮のトランク」を受け取るために四国にある自身の生家「森の家」に向かう。
ふっきれたような文体が心地よい。レイト・ワーク作品の最初の三作品は三人称で描かれていたのだが、本作は『アナベル・リイ』同様に一人称。ただし、『アナベル・リイ』のようにヘンに難解にならず、かといって平坦なわけでもない。『M/Tと森のフシギの物語』や『燃え上がる緑の木』のころを彷彿とさせる、それでいて読みやすい文体に驚いた。

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